先⽣インタビュー
本校の学生たちは夢に向かって日々研鑽を積んでいます。一流の料理人になるためには何が必要なのか、自身も神戸や故郷石川で日本料理人として腕をふるってきた経験をもつ日本料理担当の石髙先生にお聞きしました。

石髙 晃二先生
◉第3回日本料理コンペティション近畿中国四国地区 優勝1位◉第3回日本料理コンペティション全国大会決勝 技能賞受賞
◉日本料理大賞2022―2023 京都決勝大会出場
◉日本料理・給食特殊料理 地方試験委員
◉兵庫県ふぐ処理責任者試験委員
「一流」とは、強い信念とともに
少しずつ近づいていくもの。
── 先生自身が多彩な場で活躍してきた料理人でもありますが、一流の料理人として必要なことは何でしょうか?
強い信念ですね。料理人として一流になるんだという信念をもっていると、自分の技術に対してこだわりが生まれます。もっとうまくなりたいという向上心も生まれ、よく練習を重ねるようになります。そうして調理のテクニックを身につけると、次はもっといいものがつくりたいと、素材へのこだわりが出てくる。その次は器、というように興味がどんどんわき、調理場以外での準備段階からお客さまに召し上がっていただくまでの全体を通して、一つひとつの質を上げることができます。これを続けていくことで、少しずつ「一流」へと近づいていくのだと思います。
失敗してもあきらめなければ、
より経験は豊富になる。
── 積み重ねが大事ということでしょうか。
その通りです。いきなりすべてを上手にはできませんし、一つひとつ課題をクリアして達成感を味わう楽しみもあると思いますよ。何でもすぐにできて上まで上りつめてしまうよりも、不器用な人の方がいろいろな失敗を経験しながら一生懸命取り組むので、より多くのことをおぼえられるのではないかと感じます。自分のしたいことをそのまま手元で表現でき、直接お客さまの反応も見られるのが料理人の仕事の醍醐味。そこにたどり着くまであきらめないでほしいですね。
── 先生自身の経験はどうでしたか?
私もたくさん失敗しましたよ。思うようにできないことが悔しくて泣きながら帰ったり、調理場に入るのが怖いと思ったりしたこともあります。それでも先輩や上司の方に励まされ、支えられながら続けてこられましたね。「いつかは(一流の料理人になる)」という強い思いが自分自身の支えにもなり、頑張ることができました。

まかないも特別な日の献立も。
必要な技術を習得できる。
── 今、学生にはどのような指導をしていますか?
日本料理の担当として、食材の下ごしらえや素材の生かし方などの基本的なことから、応用として結納や結婚式など祝いの席における特別な献立の調理法を指導しています。そのほか、École CPはプロの料理人をめざすための高度な調理実習が多いのですが、最近のニーズに応えるため、家庭料理の調理実習も行っているんですよ。
── 時代のニーズをとらえたカリキュラムを実施しているんですね。
これまで西洋料理の高い技術を得た優秀な学生が、就職先の店のまかないとして、親子丼をつくれなかったというような話を耳にしていたんです。そこで和・洋・中、どのジャンルの店であっても、就職したときのまかないづくりに役立つ実習を始めました。丼や豆腐ハンバーグなどの家庭料理がつくれることも、料理人として必要な要素です。また、カフェで出すような定食、いわゆるカフェ飯のつくり方を学びたいという学生も多いですが、こうした基本の家庭料理を学ぶことで十分対応できると思います。
大切なのは心。
一生懸命料理と向き合い、成長してほしい。
── 学生にこれからどのような力を身につけてもらいたいですか?
テクニックをきちんと身につけること。特に調理の基本である包丁の技術ですね。そして、周りへの気配り。将来プロとしてお金をいただくことを今のうちから意識し、おもてなしの精神を深めてください。これができていると、お客さまに何より喜んでいただけます。また、気配りができていると周りのスタッフも気持ちよく働けるので、自分自身が先輩方にかわいがってもらえますよ。料理人でなくとも、社会人として、心ある態度が1番大切です。École CPでは学生にあいさつやマナーをきちんと身につけてもらうため、授業の内外で指導しています。
── そのほか、学生にどのようなことを大切に成長してもらいたいですか?
料理を楽しみながら取り組む姿勢を大切にしてほしいです。信念と同じく、楽しむ気持ちからも向上心が生まれます。また、飲食業界は厳しいイメージがあるかもしれませんが、実際は厳しいのではなく、一生懸命な人が多い業界なのだと思います。一生懸命に打ち込んでいるからこそ、技術に対しても接客に対しても妥協をしなくなる。そこを理解して、粘り強く課題に取り組んで成長していける人材を育成していきたいですね。

現場で役立つ一生モノの技術を身につけられるのが本校の魅力。学生全員が高い技術を修得するためには丁寧な指導が欠かせません。学生一人ひとりとどのように接し、指導しているのか、製菓担当の野中先生にお聞きしました。

野中 貴大先生
◉ 第44回西日本洋菓子コンテストBクラス 最優秀賞◉ 第54回クリスマスケーキコンテストAクラス 優秀賞
◉ 第25回全国菓子博覧会兵庫工芸 優秀賞
自ら働きかけ、一人ひとりの特性を知る。
── 学生とのかかわりにおいて、心がけていることは何でしょうか?
まずは一人ひとりのことをよく知るように心がけています。そして学生それぞれの特性に合わせてどのような距離で接し、教えるのが彼らにとって的確なのかを考えます。全員に興味をもち、授業内外で柔らかい雰囲気で話しかけるようにしています。
── 先生からかなり働きかけているんですね。
早く関係を築いてスムーズなコミュニケーションがとれるように、できることはしたいと考えているんですよ。顔と名前を覚えるために、登校時にエントランスであいさつの声かけもしています。こうした働きかけを続けていると、学生もこちらに早く慣れてくれていろいろな会話ができるようになります。さらに時間がたつと、授業外にも学びや普段の生活についての相談をしてくれるようになってうれしいですね。
充実した学びには、信頼関係が不可欠。
── 指導において、一人ひとりと向き合うことの意義は何でしょうか?
学生との間に信頼関係を築けます。そして信頼関係があると、学生はわたしたち教員の話をしっかり吸収し、また、疑問や不安を相談してくれるため、より知識や技術を得ることができます。特に全員レベルが違うと言ってもいい技術面において、卒業時に全員が課題クリアをめざして技術を高めるには、一人ひとりへのフォローアップが一番効果的です。専門職養成校の教員としても、私自身一人の料理人としても、学生が技術力をつけるだけでなくその先の調理・製菓の楽しさを知るところまできちんと指導していきたいと考えています。
── 具体的にどのような取り組みがありますか?
「もっと技術を⾝につけたい」「苦⼿を克服したい」という学⽣たちの声に応えて、基礎技術向上を応援する「フォローアップレッスン」を開講しています。授業の空き時間を活⽤して⾃分のペースで⾃由に受講できますし、材料費も無料。積極的に参加してたくさん練習してほしいです。私たち教員も⼀⼈ひとり のレベルに合わせてしっかりとサポートします。

学生の成長が何よりのやりがい。
卒業後も続く絆がある。
── そうした取り組みの中で、先生はどのように指導に関わっていますか?
答えまですべて教えてしまうのではなく、ヒントを与えるようにしています。いつも同じようにおいしくケーキをつくるためには混ぜる時の感触をおぼえたり、焼ける時の音を聞いたりするよう指示し、フルーツのカット技術では、立ち方や姿勢を変えるなどのアドバイスをしています。学生が自己流でしていることを少し変えるだけで、ちがってくるものなんですよ。
── そのように細やかな指導をする中で、印象に残っていることはありますか?
学生の成長を感じるのがいつも一番の喜びです。入学当初は不器用だった学生ができない悔しさをバネに練習を積み重ね苦手を克服した時や、卒業生の活躍を耳にした時がうれしく、印象に残っていますね。
── 卒業生とのつながりもあるそうですね。
はい。卒業してからも就職先で壁にぶつかったり悩んだりした時に相談に来てくれます。信頼してくれていることを実感できる瞬間です。また、結婚したり子どもが生まれたりすると、新しい家族を紹介しに来てくれることもあるんですよ。それもまた、教員をしていてよかったと感じることのひとつです。
謙虚な心が成長の源。
多くを吸収できる人材に。
── 今後、学生にはどのように成長してもらいたいですか?
技術を身につけるのは、とても時間がかかることです。思うようにできず、不安になることもあるかもしれません。けれども、ずっとできないままということも決してありません。大切なのは、謙虚な心。注意されたことを直そうと練習を続けていれば必ず成長できます。これはどんな仕事に就いても同じこと。常に「自分はまだまだ」という気持ちをもって、いろいろなことを吸収できる人であってほしいと思います。

本校の就職率は毎年ほぼ100%です。変化の激しい飲食業界への就職にどのように取り組んでいるのか、キャリア担当として在校生・卒業生の就職をサポートしている井上先生にお聞きしました。

井上 一朗先生
在校生・卒業生への充実した
就職サポートがÉcole CPの強み。
── 先生がキャリア担当を始めたころと現在とで業界の変化はありますか?
業界における一番の変化は、新入社員の離職の増加ではないでしょうか。就職しても勤務が3カ月も続かないこともしばしばで、それにともない飲食業界全体の人手不足が深刻になってきています。店舗側もやめられてしまっては困るので、完全週休2日制にしたり営業日自体を減らしたりと、社員が働きやすい環境をつくろうと努力しているのが感じられます。
── École CPとしてそれに対応していることはありますか?
まず在校生と就職先とのすり合わせを丁寧に行うことはもちろん、卒業生へのサポートも実施しています。それぞれの職場での悩み相談に乗ったり、転職活動をサポートしたりしているんですよ。これがÉcole CPの特長のひとつでもあると思います。
さらに2021年度より「就職安心サポートシステム」を導入します。卒業時に就職が決まっていない場合でも、就職ができるまで対応します。
一人ひとりの希望や個性を把握し、 就職先をマッチング。
── École CPの就職サポートの強みは何でしょうか。
学生と企業とのマッチングができているところです。そのために、担任の先生も私も、学生一人ひとりに徹底的に向き合っています。お互いに納得いくまでとことん話し合っているからこそ、より学生の希望や特性に合った就職先を見つけることができているんです。
── 実際にサポートを行う際、心がけていることは何でしょうか?
いつも念頭に置いているのは「適材適所」。どの企業なら学生が長く働いてくれるか、学生本人の希望はもちろん、一人ひとりの個性や得意分野を客観的に見て考えます。接客が上手だったり、地道な作業が好きだったり、その技術をきちんと生かせる職場を提案することが大切ですね。この意識が、結果として就職サポートの強みであるより良いマッチングにつながっていると思います。

長く活躍するために、仕事への理解を深めてほしい。
── 学生に将来どのような人材に成長してもらいたいですか?
長く勤め続けられる根性のある人になってもらいたいです。そのためには、私たちサポート側が行う就職先のマッチングも大切ですが、本人の飲食業界の仕事への理解が一番必要だと思います。
── 理想と現実のズレが原因でやめることが多いということですね。
そうです。しかし、そもそもどんな一流のシェフやパティシエでも、最初から何でもできたわけではありません。誰でも皿洗いから始め、先輩から注意され、朝早くから夜遅くまで練習をして、やっと一流と言われるまでになっているんです。自分がこの業界でトップになろうと志すならば、とにかく目の前のことに全力で打ち込まなければならないことを理解してほしいですね。なかなかやりたい仕事をさせてもらえないことで、やりがいを感じなくなり、「こんなはずじゃなかった」と業界自体を嫌いになってしまうパターンもあるんですよ。せっかく努力をして知識や技術を得たのですから、もうひと踏ん張り頑張ってもらえたらと思います。
業界を盛り上げるために、「適材適所」を続けたい。
── キャリア担当として、これからどのような取り組みをしていきたいですか?
今後の飲食業界を盛り上げるためにも、学生の離職率を下げる努力をしていきたいです。学生が「この店で働けてよかったな」、店舗側も「この子を雇ってよかったな」と、思えるようなマッチングができるとうれしいですね。そのためにこれからも適材適所を心がけて、やりがいを感じられる職場を学生に提案していきたいですね。また、サポートとしてアルバイト先やインターンシップ先の斡旋も行っています。実戦練習としてもですが、仕事への理解を深める目的でも、学生に利用してほしいですね。
